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<院長のブログ>

(写真:大弐三位詠草、筆・持明院、大和絵・土佐光則  当家所蔵)

 

 

秋の風 >

夏の終わり。

秋はさやかにきにけり。何となく、朝夕の風は秋の香りをまといながら木々や葉を揺らし、あんなに暑かった日差しも一雨ごとに柔らかくなり、秋はたしかに忍び足でそこまで来ています。温暖化による気候変動は日本にとって欠かせない「四季」を奪ってしまうのでしょうか。古来、季節の移ろいと共に生きてきた日本人、農作や稲作もこの季節の変わりを視ながらすすめてきたのです。加えて、月や星の動きも季節と共に巡っているのに……

秋の長雨、台風が去れば、肌に少し寒さを感じる季節になります。そして、お月見の季節になっていきますね。秋の長い夜を一献傾けて過ごし、読み物、書き物などに費やす季節です。私はこの秋の夜長、手すさびは笛を吹くことにしています。龍笛、高麗笛、神楽笛をその日の気分によって吹き回します。ご近所はたいそう迷惑なことでしょう(笑)

雅楽を習うようになってまだ4年、たいして素晴らしい音色は出ませんが、秋の澄んだ夜空の明るい月を観ながら吹く時間は格別です。雅楽の世界は1000年以上変わらず、現在までずっと続いていると言われますが、じつはそうでもないようです。私の所属する「平安楽舎」(コラムにリンクしています)の楽長である長谷川景光氏は、学術的な文献や古楽譜を調べていくうちに江戸末期から明治期を境に雅楽の楽譜や演奏方法が平安・鎌倉時代とは全く変わってしまったと言います。映画「陰陽師」に出てくる笛の名手・源博雅(みなもとのひろまさ)は実在の人物ですが、彼の残した古楽譜を苦労しながら掘り起こし、編纂し直して長谷川氏は私たちに丁寧に教えていただいています。

今とは違い、高い建物などない秋の澄んだ平安京の夜空に博雅の吹く笛の音は、一キロあたりまで聞こえたと言います。そんな風雅でゆったりと時が流れる時代も先人たちは知っていたのですね。何でもかんでもデジタルがすべて、デジタルで解決できないものはないと傲慢な現代人の乾いた心に笛の音が響いて潤いを与える時間があってもいいのではないでしょうか。月を見上げながら、笛の音を愛でてみてはいかがでしょう。(↓)

長谷川景光CD「わくらば」より https://youtube.com/watch?v=Vktvh2-Ggp8