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<院長のブログ>

 

夜桜

春の花といえば、やはり、桜。

今年の開花は4月になり、入学式に桜を背景にした記念写真がようやく撮影できたひとも多かったことでしょう。

診療室のある半蔵門は、千鳥ヶ淵の桜が有名ですが、今年はライトアップという趣向でしたので仕事が終わってから、夜桜見物に行きました。昼間の霞むような花の姿とはまた違って夜のライトに映る姿は妖艶な趣きといったところでしょうか。

誰に教えられたわけでもなく、花は毎年、その季節になると健気に咲きます。花を愛でる日本人は歴史を通じて、ひとの儚い人生に心写しをしてきました。先人たちの辞世の句に桜や梅、花を使ったものがどれほど多いことか。

昨年、伯母が102歳で他界しました。母をはじめ、ほんとうに多くのひとを見送っていますが、そのつど、感じるのは諸行無常です。どんなに偉い立場であろうが、権勢を誇る方であろうが、あるいは市井の片隅でひっそり生きてきた方であろうが、人生の終わりが必ず来ます。桜はそんな人の世の儚さ、うつろいを短い散花ということで現しているようです。

もうすぐ終わる桜の花の宴。せめて、私たちは今を謳歌し、花と共にしばしの夢かうつつを楽しみたいものです。

「世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし」 在原業平

(もし世の中にまったく桜がなければ、春をすごす人の心は一喜一憂せずにすむのになあ)