<院長のブログ>

(写真: 欧・インスブルック大学での臨床)
ニュース等でご覧の方も多いと思いますが、矯正歯科治療の詐欺事件を訴えて被害者の集団訴訟が起こりました。
同じ歯科医としてこれほど恥ずかしくて情けない事件もありません。と、同時に世間の人々の矯正治療への関心と無知があらわになったことで、私自身も勉強になりました。私は随分前からいわゆる「マウスピース矯正」はお勧めしていませんし、事あるごとに文章でも皆様へ伝えてきたのはご存知の通りです。歯の移動というのはそんなに簡単なものではありません。顎の骨の中を移動させるのですから。それなりの時間とお互いの忍耐や多少の痛みが伴うものです。それをいかにも簡単にプラスチックカバーをはめていれば自然に短期間に動いていくものだと説明するほうが不自然ですし、医者の言うことだからと鵜呑みにしてしまう患者さんのほうにも責任の一端はあるように思います。(少しキツい言い方ではありますが)
それ以上に私が失望したのは、「モニターだから無料」というキャッチに多くの人が乗ってしまったことです。昔から、タダほど怖いものはないというじゃありませんか。加えて悪質なのは、一旦、支払いをさせておいて無料になるという「詐欺」行為のほうですね。私も以前にクリーニングをお受けになる患者さんの治療費を2回分お支払いいただくと割引ということをしたことがあります。しかし、これはあくまでも感謝の気持ちからの行為であり、費用だけいただいて何もしないなどというのとは、まったく違うものでした。
そして、最近の歯科医療に感じることの多いのが、SNSを利用した詐欺的な手法による誘導治療です。ホームページ上での説明というのはあくまでも医院の概要を知っていただく目的です。もし、さらに詳しく知りたいということであれば、一度、受診してご自身の目で確かめる努力をするべきかと思います。面倒くさがってネット上での予約から詳細までをバーチャルの世界で完結しようとするほうが無理な話です。どれほど卒後研修を重ねた、こんなディプロマがたくあさんある、最新・最先端治療をしているとHP上にあるとしてもあなたの治療成功を保証しているわけではありません。大切な歯、お体を預けて治療を受けるのですから、よく歯科医と相談して納得してから進めてほしいと思います。
被害に遭われた方々にはほんとうにお気の毒だと思いますが、「医者を選ぶのも養生のうち」と昔の人は言ったのです。その先生がどんな臨床をしているのか、どんな教育を受けてきたのかなど、ご自身で確認して受診する時代です。SNSで評判が良いだとか、雑誌に常連だから、だとかの理由が必ずしもあなたにとって正しいとは限らないのです。