<院長のブログ>

(写真: 私が使用中の龍笛「紫明」(名匠・福田氏の流れをくむ笛)
<雅楽 三笛>
雅楽は今から1300年以上前に大陸から渡ってきた音楽です。
その演奏楽器の中で、龍笛(りゅうてき)、高麗笛(こまぶえ)、御神楽笛(みかぐらのふえ)この三つを雅楽における三笛とよびます。
最も一般的なものが、龍笛です。字のごとく、龍が鳴くような声に似た音をだすからといわれます。
龍笛は主に唐楽とも云われ、唐の国の宮廷音楽で広く用いられた笛です。地から空を昇り、天へ届くような力強い音色ですが、日本に伝わったのち平安時代になって国風文化と共に宮中で演奏されるようになると平安貴族の嗜みの一つになったのです。西洋の金管楽器と違い、竹(おもに煤竹)を材料として作られるので大きな音とはいえ、何かしら柔らかさもあることも貴族たちの琴線に触れたのかもしれません。
私は、一応、三笛を稽古していますが、演奏する機会としては、龍笛の登場が一番、多いのかもしれません。
高麗笛は朝鮮半島から伝わった笛で、ピッコロのような小さくて甲高い音が特徴です。合奏における役割が多く、単独で演奏されることはあまりありません。
そして、御神楽笛。これは、別名、やまと笛とも呼ばれ、日本古来の笛です。つまり、古代の信仰、祭祀などの儀式に神さまという存在を我々のところにお呼びして、共に祈り、食べ、踊るといった一連の時間には和琴(和琴)、楽琵琶(がくびわ)とともに欠かせない楽器です。今でも大きな神社をはじめ、宮中三殿において行われる御神楽儀は、夕方から庭火を焚き、神さまを迎え、ともに翌朝まで過ごし、見送る一連の秘中の神事で用いられる笛がこの御神楽笛です。その後、民間信仰の「おかぐら」別名「里神楽」に広がったものの原点はここにあったのです。雅楽というと、なにか身近ではない特別なものという感覚がありますが、じつは日本人の中にある「いにしえ」の記憶としてDNAレベルで聞くことのできる世界には類のない音楽なのです。
私も伝統文化に折々、触れるにつけ、雅楽の持つ魅力を皆様に伝えたいと思っています。このたび、雅楽のみならず、失われつつある日本の伝統文化の各分野をもう一度、一緒に体験してみたいと思い、「古香会」という集いを始めました。いにしえのかおり、つまり、先人たちが聴いていた、触れていた、見ていた、歌っていた文化を皆様と一緒に現代によみがえらせて体験しようという趣旨です。雅楽、和歌、書、香、花、衣紋、弓馬、庭、神仏など各分野の一線での専門家による解説と体験です。
いずれ、ご案内しますので、ご興味のある方は、是非、ご自身で触れて感じてみてほしいと願っています。