<院長のブログ>

<緑の地>
長年、訪ねてみたい場所がありました。
やっと、予定を組んで、その地へ行くことができました。東京から新幹線で4時間あまり、そこからさらにクルマで2時間ほどの山の中。
神々の聖地ともいわれるその場所は、緑深く、空気も澄んだ静謐な場所でした。私たちが自然を八百万の神と崇め、生きるための指針として仰ぎ見ていた天空のそのものにある場所。
月を眺め、太陽を浴び、星のうつろいを農耕の大切な暦として日々の生活に密着させていた時代の遠い記憶のようなものをそこでは瞬間に気づかせてくれました。自然からの恵みに感謝して、あるいは、畏敬して自分たちの生き方を見直していた先人たち。謙虚に素直に日々を精一杯、生きていたんだと実感できる時間でした。ありがとうございました。
前日に近くに泊まり、翌日の朝、その地へクルマで向かいます。天気予報通り、雨模様です(悲)。しかし、クルマが入り口を過ぎた頃から急に雨が止み、目的の場所に到着すると雨雲のグラデュエーションから太陽が差し込んできました。「よく来たね、よしよし」と、頭を撫でられているような心地よさで私はなぜか、うれしさがこころの深い所からこみ上げてきたのです。
その場所は、神代文字で表記されています。現代語にすると「生きなさい」という意味。しばらく、あたりを散策して、360度を見渡せる高台に。たしかに昔の人々がここに立つと、何かはわからなくても自然や宇宙という存在を無視できない気持ちになるんだろうなあ、と肌で感じたのです。
「ありがとうございました」と手を合わせ、帰ろうとする背中には途端に大雨が…….
かつて人々がそこに集まり、祈りを捧げたであろう「域」には言葉では表現できないくらいの神気が満ちていました。ザーザー降りの雨を受けながら、クルマで下る山道の緑は深く、木々の濡れる枝葉までが私の禊になってくれたかのような光景でした。こんな神秘的な体験ができたことへの感謝と明日からの日々への期待で胸を高鳴らせながら走りました。
「生きなさい」という言葉、なによりも慈しみの思いにあふれていたように思うのです。